第1話 ミライエの最初のお客さん(前編)
ミライエ代表の島田が、ミライエの仕事について色々と発信していきます。
その記念すべき第1話 前編!
15年以上前、ミライエにとって初めてのお客さんのお話です。
第1話 ミライエの最初のお客さん(前編)
15年以上前、最初のお客さんとの出会い
ミライエを立ち上げて1週間目。
近畿地方のとある産廃屋さんから「生ごみの堆肥化をやっているがうまくいかず困っている。助けてほしい」とメールで相談が入った。
これが最初のお客さん。
嬉しくて、すぐに電話を掛けた。相手は堆肥化施設の運営を任されている工場長だった。
「昨年、会社が生ゴミ処理の堆肥化工場を立ち上げたんですよ。私はそこの運転管理をしています。でもゴミがべちゃべちゃなままで、堆肥になっている感じがしない。これではダメと思っているけど、どうしていいのか分からない。」との内容。
「任せてください、とにかく現場を見に行きます」と返事をし、1週間後には訪問すると伝えた。
でも本当のことを言うと、そのとき実はまだ家畜糞以外の堆肥化の知見があまりなかった。なのでとにかく情報を集めた。
家畜ふんと生ごみの特性の違いは何か?うまくいかない原因はどんなものがあるのか、文献(アマゾンがあって良かった)と論文とを読み漁り、自分なりに仮説を立ててみた。
臭いの原因の仮説を立ててみた
まず大きな違いはpH。家畜糞はアルカリ性だけど生ごみは酸性(pH4.5とか)。そもそも腐敗した状態で持ち込まれる。
そしてADF(酸性ディタージェント繊維)が少ないこと。ADFとは、ざっくり言うと「分解されにくい繊維分」のこと。ADFが多いと、形状をずっと保ちやすい。少ないとドロドロに腐敗して、スープ(というか、シチューかな)状になりやすい。
牛糞は、そのまま放置しててもずっと牛糞の形状を保ち続ける。一方で生ごみはADFが少ないので、すぐにドロドロになる。ドロドロになると嫌気性になる、そのため堆肥化が進まなくなるのだ。
夏に生ごみを放置すると、すぐに酸っぱい匂いになって形状が崩れていくのは、みなさんも経験があると思います。
そこで、この仮説が正しいかどうか現場で調べるために、堀場製作所のpH計と酸素濃度計を購入。あとは水分計などその他諸々の機材を現場に持ち込んだ。
いざ、訪問!
いざ訪問当日。一人で車を運転して現場へ向かった。
私は現場に行くときはいつでも、すぐに訪問しないで現場の周辺をぐるっと回るようにしている。もちろん車の窓を開けたまま。匂いがどれくらい強いか、どこまで届いているかわかるからだ。こちらの現場は本当に強烈で、地図を見なくてもこっちが現場だとわかるくらい、離れたところまで悪臭が漂っていた。
現場に近づくと、その堆肥化工場の敷地にはカラスがびっしりと止まっていて(まるでヒッチコックの映画のように)、工場の周りに植えてある生垣のカイヅカは、悪臭のガスで葉が一枚残らず枯れていた。
『これはエライところに来たな』
あまりの匂いに、車は工場から百メートルほど離れた場所に停めなおして、工場の事務所を訪れた。
「遠いところまで、よく来てくれましたね」工場長はそういって出迎えてくださると、今現場がどういう状況か、そしてこれまでどんな対策をしてその結果がどうだったかを事細かに話してくれた。
話を聞きながら気になったのですが、事務所内には電源のついていないモニターが何台もある。
「あれは何ですか?」と尋ねると、堆肥工場の様子をぜんぶモニターで見えるようになっているとのこと。プラント工事したメーカーの自慢の機能だったそう。しかも、各所の温度データも事務所で常時監視できるようになっている。
しかし工場長曰く、「堆肥化がうまくいってないんで、今は電源切ってるんですよ」と。
「メーカーはどんなサポートしてくれるんですか?」と聞いたら、「何もしてくれない。それで大喧嘩になって、今は電話にも出てくれなくなった」と。
工場長の話を一通り聞いた後、現場を見てみることにした。