第1話 ミライエの最初のお客さん(後編)
ミライエ代表の島田が、ミライエの仕事について色々と発信していきます。
その記念すべき第1話 後編。
その1では、想像以上の処理しきれない生ごみの臭いを体感した島田、解決するために駆け回る!
第1話 ミライエの最初のお客さん(後編)
現場の様子
現場の工場に向かう。建築直後とあって外観はとても立派だが、中に入るとすごいことになっていた。思わず顔をしかめるようなひどい臭気。床には小さなミッキーマウスが走り回り、工場内までカラスが我が物顔で侵入して、積み上げたゴミをついばんでいる。
「どうせなら、このゴミ全部食ってくれりゃいいのに」
諦め顔の工場長がそう呟いていた。
この工場の処理フローは、こうだ。
飲食店などから集められたゴミを副資材と混ぜて、スクープ発酵槽に積む。スクープ槽で2週間程度撹拌された原料は堆積槽に積み上げ、ブロワで通気しながら切り返しを行い、さらに数週間発酵させて完成という流れである。
さっそく実際の発酵状況を確認するため、持ち込んだ機材で計測を開始した。
スクープ槽では酸素濃度が19%、pHが4.2、スクープの入り口から出口までほぼ値が同じ状態。温度も入り口側が34℃、出口37℃。つまり嫌気性状態のままほとんど酸素を消費していないことになる。嫌気性の微生物が支配的な場合や、堆肥の水分が少なすぎて発酵が停止した場合などに、このような現象がみられる。
ついで堆積槽は酸素濃度6-16%(場所によるバラつきあり)、温度は40-50℃。ただpHは5弱と、まだあまり高くない。
現場では切り返すときに、ユンボで出来るだけふんわりと堆積させるなど工夫がされていたが、そもそものスクープ槽が機能していないので限界がありそうだった。また、換気が悪いために場内の湿度が非常に高く、建屋内が結露して水分が堆肥の上に落ちてくるなど構造上の問題が散見された。
こう書くと本当に問題だらけの施設だが、これを何とかするのがミライエのミッション。本音を言うと、ミライエの未来のためにも「絶対成功させるぞ」と必死だった(笑)
解決策を提案!
工場長に提案したのは、大きく2点。
まずミライエの高圧通気で先に温度をあげましょうということ。
ついで副資材を空隙の高いものに変更しましょうということ。
堆肥化で通気が上手くいくと、好気性微生物が有機物を分解してアンモニアを出す。そのアンモニアによって原料が徐々にアルカリ性になっていく。好気性微生物はアルカリ環境になるほど酸素消費量が増え(つまりよく働くようになる)ますます温度が上昇する。一般的には弱アルカリ(pH7-9)の状態で微生物の働きが高まると言われている。
工場のデータ計測とそのとりまとめ、工場長への説明まで終えるとあたりは薄暗くなっていた。これから島根に帰らないといけないが、とにかく体中がとんでもない匂いに包まれている。
この工場の近くに公共の墓地があり、私はその水場でパンツ一丁になって体を洗った(笑)
当時は坊主頭だったので頭も洗い流し、それなりにさっぱりできた。しかしこんな姿を誰かに目撃されたら通報されるので、内心ヒヤヒヤだった。
その後
さて、そんな努力と熱意の甲斐あってか導入いただけることとなり、狙い通り高圧通気区では高温発酵することで、まずは改善の効果が見られた。導入後も換気についての助言や処理フローの変更など、様々な提案をおこなった結果、温度だけでなく臭気なども徐々に改善していった。
ミライエの初仕事なのでとても印象に残っている案件。
施設の運転が改善するようになってから工場長に焼肉をご馳走になり、そこで飲んだマッコリがとても美味しかったこともよく覚えている(笑)
大変だけど、良い仕事だなあと心からそう思った。