第6話 はじめての商品開発(後編)
乳牛糞や汚泥などの含水率の多いものも粒状化できる、混合装置Cモード。
前編では、牛糞を粒状にできるという発見から、前例のない装置の開発へ踏み切った経緯をお伝えしました。
今回は性能を追求したCモードの開発秘話、後編です!
第6話 はじめての商品開発(後編)
ドラム本体に原料を直接投入できるようにするため、装置の手前に大きな投入口を設けるデザインはすぐに思い浮かんだ。しかし、この構造を実現するためには投入口の形状や強度設計など、本当に細かな調整が必要だった。模擬的な投入口を製作しては何度も現場に持ち込み、実際に牛糞や汚泥を投入してみる。ほんのちょっとした差で牛糞が詰まったり、本体に過剰な負荷がかかったりと、まさにあちらを立てればこちらが立たずといった具合で、なかなか上手くいかなかった。
ドラムを水平構造にするという案も、実現には困難が伴った。この構造にするとまともに原料が混ざらないうえ、中身がちゃんと出てこないという致命的な欠陥が見つかった。
まずドラムが水平のままでは、原料が入り口付近に留まったりしてきちんと混ざってくれない。例えばコンクリートミキサー車は、ドラムを球体に近い形状にすることで中身が混ざるようにしている。しかし球体形状だと、ドラムの容積が小さくなってしまうため、あくまで水平の横筒形状にこだわりたかった。
そしてもう一つの課題である、ドラムの中に2割くらいの原料が残ってしまう問題。この点について他の装置はどうなっているのだろうと調査してみたが、当社と同じ非連続式(バッチ処理)の装置は、中身が残るのは当たり前という状況だった。次の原料を入れれば出てくるので構わないだろう、という発想である。
しかし試作機のメンテで懲りていた私は、どうしても中身がきれいに出てくるようにしたかった。ドラムの中に原料の糞や汚泥が残っていると、次の日には固着して装置の不具合に繋がるからだ。
私は社員と一緒に透明なアクリルを使って卓上サイズの試作機を作り、内部構造などを変えながら何度も試験を繰り返した。毎日深夜まで実験を続けるうちにだんだんと光明が差し、最終的には両方の課題が解決できる内部構造の目途がついた。それを実用機に反映して、さらに細かな調整を図ることで最終の装置構造が決まった。
他にも実用機の開発にあたってはいろいろな課題があったがそれもクリアし、実用化に至ることができた。もちろんその過程では当社だけでなく、周囲の様々な方の助言が大きな支えになった。とくに当社の製造パートナーであるH社は、この装置の核になるノウハウのいくつかを提唱してくれ、そのおかげでCモードはとても安定性の高い装置に仕上がった。
販売初期に納品した20年前の装置が、今でもオーバーホールなしに現役で稼働している。これは当社にとっても、とても誇らしいことだ。これから汚泥コンポスト化の市場が一気に拡大するが、きっとこの装置はさらなる活躍をしてくれると信じている。
(第6話 後編 おわり)