Column

第8話 匂いに挑むー脱臭装置開発の舞台裏(後編)

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「高濃度の悪臭でも処理できるのか」
ある養豚場からのご相談に、正直に「経験がありません」と答えた私たち。でも返ってきたのは、「失敗してもいいから、挑戦してほしい」という言葉でした。

たくさんの方々に支えられながら進んだ、ミライエ生物脱臭装置の開発裏話 後編です!
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「できない」を超える、ミライエ脱臭技術の実証の歩み

こうして開発に踏み切った脱臭装置だが、はじめから全てが順調だったわけではない。まずは小規模の装置から手掛け、少しずつ改良を重ねていくところからのスタートだった。

そんな中、ある展示会に出展した際、東北の事業者さまから「ぜひ導入したい」とのお声をいただいた。それが初めての納品へとつながる。ここから、ミライエの脱臭装置事業は少しずつ展開することとなった。

その後、ある大手養豚場さまから「アンモニア濃度2,000ppmの臭気を処理できないか」との相談を受けた。教科書的には、生物脱臭で対応できる濃度の限界は400ppm程度とされており、ミライエとしても未経験の領域であった。

正直に「これまで経験がなく、効果が出るか分かりません」との考えを先方の社長に伝えたところ、「うまくいかなくても責任は問わないから、とにかく挑戦してほしい」と後押しの言葉をいただけた。こうして試験導入が決まり、結果として90%以上の除去率を達成することができた。

大きな確信を得ることができたひとつの出来事であった。

もちろん、順調なことばかりではない。ある大規模案件では、納品後に十分な性能が出ず、装置全体をやり直すという難しい決断を迫られたこともあった。しかしこの経験が、社内の体制強化や技術の見直しにつながり、現在に活きている。

 

国内外で広がる脱臭ニーズ

現在、ミライエの脱臭装置は全国各地で導入いただいており、消耗品ゼロ・電力使用量の削減・CO2排出の低減といった点で高い評価を得ている。中には、年間の電気代を数千万円単位で削減できたという導入事例もある。

2024年からは農林水産省によるクロスコンプライアンス制度が始まり、臭気対策の重要性は一層高まっている。近年では海外からの問い合わせも増加しており、今後はより広い地域での展開を目指している。

 

終わりに

脱臭装置の開発は決して容易な道のりではなかった。しかし、現場の声に耳を傾け、たくさんの方々に支えられながら試行錯誤を重ねてきたことで、多くの気づきと成果を得ることができた。今後も、現場の課題に真正面から向き合い、解決へとつなげていきたいと考えている。

 

(第8話 おわり)

writer

島田社長

(株)ミライエ 島田社長

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1970年生まれ。靴の製造メーカー勤務を経て、2000年に家業の第一コンサルタント(現ミライエ)に入社、2006年に父親から社長を継承した。
現在のミライエに社名変更後、環境機器の専業メーカーとして全国に数百の納入先を開拓している。

プライベートでは料理好きで、クックパッドには100種類のレシピを載せており、ワイン好きでもある。
ワンちゃんとのレストランめぐりとボクシングが趣味で、好きな言葉は『笑う門には福来る』!