第12話 その原料、“赤字の原因”になっていませんか?(堆肥化事業者様向け)
堆肥化の大きな課題の一つ、原料の水分調整。この水分は、単なる処理条件の1つでしょうか。今回は、堆肥化施設の経営目線に立って、この「水分」に着目してみました。

水分が高い原料は、何円で処理するべきか
前回は、堆肥化施設における「水分コントロールの重要性」について書いた。
今回はもう一歩踏み込み、原料水分が処理単価にどう影響するかという、経営目線で整理してみたい。
つまり、
「実際、いくらで受けなければ事業として成立しないのか」
という話である。

水分上昇による二重悪化
水分が上がると、現場では二つの変化が同時に起きる。
一つは、副資材の増加。 もう一つは、受入量の減少。
副資材(チップ・オガ粉等)は水分調整のために不可欠であり、水分が高いほど投入量は増加する。
一方、発酵槽の容積は一定であるため、副資材が増えた分だけ原料の受入量は減少する。
つまり、
▼売上減
▲原価増
という構造だ。
原料水分と処理可能量のバランス
| 原料水分 | 処理可能な 原料量(t/日) |
副資材の 必要量(t/日) |
| 80% | 4.1 | 2.4 |
| 85% | 3.6 | 2.9 |
| 90% | 3.3 | 3.3 |
| 95% | 3.0 | 3.5 |
同一設備でも、水分上昇により副資材は約1.5倍に増加してしまう。
一方で、原料受入量は約25%減少する。
粗利15%を前提とした必要単価
固定費および副資材費を考慮し、粗利15%を確保するための受入単価は以下の通り。
表1:必要受入単価(副資材コストのみ)
| 原料水分 | チップ17円 | チップ20円 | チップ25円 |
| 80% | 20円 | 22円 | 26円 |
| 85% | 28円 | 31円 | 36円 |
| 90% | 37円 | 41円 | 47円 |
| 95% | 49円 | 52円 | 60円 |
すでにこの時点で、水分90%の原料は、従来単価を大きく超えている。
見落とされがちな要因 ― 発酵期間の長期化
水分の影響は、これだけではない。
水分が高い原料は、発酵に時間がかかり、結果として発酵期間が延びる。
表2:原料水分と施設回転率
| 水分 | 発酵日数 | 回転率 |
| 80% | 28日 | 100% |
| 85% | 35日 | 80% |
| 90% | 45日 | 62% |
| 95% | 60日 | 47% |
発酵期間が延びるということは、ブロワ等の設備を長時間稼働させる必要があるということ。
例えば、処理物1kgあたりの基準電気コストを5円/kgとすると、
・80%水分 → 5円/kg
・95%水分 → 約10円/kg
となる。
発酵期間が倍になれば、単位あたりの電気コストもほぼ倍になる。
つまり、
▼能力低下
▲コスト増
の同時発生ということになる。
実態に近い必要単価
これらをすべて反映した場合の必要単価は、以下となる。
表3:必要受入単価(ランニングコスト込み)
| 原料水分 | チップ17円 | チップ20円 | チップ25円 |
| 80% | 26円 | 28円 | 31円 |
| 85% | 34円 | 36円 | 42円 |
| 90% | 44円 | 47円 | 53円 |
| 95% | 57円 | 60円 | 69円 |
現在、産廃単価は25円/kg前後まで上昇している。
しかしこの水準でも、
・水分85%以上 → 利益圧迫
・水分90%以上 → 構造的赤字
となるケースが多い。
結論
水分の高い原料は、
・副資材コスト増
・受入量減
・発酵期間増による回転率低下
・ランニングコスト増
という“四重の悪化要因”を持つ。
その結果、「処理が難しい」ではなく「事業として成立しない」という領域に入る。
つまり、水分は単なる処理条件ではなく、経営条件であると言える。
(第12話 おわり)
