第4話 島田、社長になる。(後編)
島田の社長就任後、どのような方向に会社を進めていくのか、そこに至った考えを振り返りました
第4話 島田、社長になる。(後編)
時代に合う事業とは
さて、「時代に合う事業」についても書いてみる。先述の松井道夫氏(松井証券社長)はこんな風に表現していた。「企業にとって最大のコストは時代とのギャップ。それを決めるのは社長なのだから、社長の頭の中が企業の最大のコストである」と。
たしか松下幸之助翁も事業が成長した理由を問われたとき、「なんといっても、時代に合うことですな」と答えたと聞いたことがある。
ところで当時の自社を俯瞰してみると、明らかに時代に合わなくなっていた。もともと当社は測量設計の会社で、「総合建設コンサルタント」の看板を掲げていた。総合建設コンサルタントとは、測量や地質、土木設計など豊富なメニューと技術者を取り揃えている業態のことだが、折からの建設不況で市場が一気に縮小すると、この業態は大きな弱みに転じていた。顧客は、なんでもほどほどにできる業者ではなく、地質は地質の強い業者へ発注するという流れが起きていた。ちょうどデパートが、アパレルや家電量販などのカテゴリーキラーに顧客を奪われたのと同じ、「何でもあって何にもない」状態になったのと似ている。
この時考えたのは、どの事業なら生き残れるのだろうかということだった。他にはない強みを持った事業、それだけで戦うしか道はない。私は結局、祖業だった測量設計業を廃業して、環境部にいた1名の社員だけを残すという決断をした。
市場の共感を得ること
ただいつも自問していたことがあった。「企業は時代に合えば確かに成長する、しかしそれだけで本当に良いのか」と。
折しもこの頃、とある大手の食品会社が大きな不祥事により一夜にして会社がなくなったといったことがあった。長い歴史があり、強固な販路を築き、盤石の財務基盤を誇っていたこの会社ですら、事業を継続できなくなってしまう。この会社は多数の売れ筋商品を保有していたので、少なくとも時代には合っていたはずだ。しかしそれだけではダメなのだ。
そんな考えから生まれたのが、「市場の共感を得る」という考え方だった。この考えはミライエの7バリューズにも示していて、「市場からの共感を得る会社とは一義的には時代に合った会社だけど、同時に市場から愛されている会社でもあるということ。これまでの企業と消費者の関係のように時に利害が対立するようなものではなく、目的を共有し相互に発展する そうした在り方が求められている。」と表している。
無論、今のミライエはまだ道半ば。というより、永遠に取り組むべきテーマだろう。幸いにもミライエには、多くの叱咤激励してくださるお取引先がある。その方たちから、より多くの共感を頂けるように邁進していきたい。
(第4話おわり)