第8話 匂いに挑むー脱臭装置開発の舞台裏(前編)
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「臭いで困っている」
堆肥化や畜産の現場で、お客様から何度も聞いてきたこの言葉。
努力を重ねても消えない悪臭に、頭を悩ませる日々。
そんな中、鳥取県のある試験場で出会ったのは、見たことのない“脱臭技術”でした。
薬剤も基材も使わず、長期間安定して働き続けるという、まさに夢のような仕組み。
しかしその道は決して平坦ではありませんでした。
ミライエ生物脱臭装置の開発裏話 前編です!
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現場の声が後押しした、新しい脱臭技術への挑戦
ミライエが脱臭装置の開発に乗り出したきっかけは、ある大手取引先からの紹介である。「鳥取県に面白い技術がある」との話を受け、鳥取県の家畜試験場を訪ねたのが始まりだった。そこで出会ったのが、多孔質ガラスを用いた生物脱臭という新たなアプローチだ。
この技術は、従来の脱臭装置のように基材や薬剤を消費することなく、安定した性能を長期間維持できるという、非常に画期的なものであった。
私はこれまで、堆肥化の工夫で臭気を抑える取組みを続けていたが、それだけでは限界があると感じていた。何より、深刻な悪臭問題に悩まされている現場が数多く存在することを知れば知るほど、何とか解決できないかとの思いが強くなっていた。
そうした背景から脱臭技術には大いに関心を持っていたが、同業他社からは「手を出さない方がいいよ」と忠告を受けていた。リスクが高く、失敗例も少なくない分野だからである。それでも、現場で感じてきた課題を解決したいという思いは強く、試験場の担当者と幾度となく意見を交わした。ただ、調査を進めるほど、「これは堆肥化装置よりはるかに難しいな」と、その技術的なハードルの高さを感じるようになった。正直、この技術の開発に踏み切るべきか、自分の中でかなり迷いが生じていた。
そんな折、ある社員が「島田さん、やってみましょう」と声を上げてくれた。彼が先行して調査や検証を進めてくれたこともあり、私たちは小規模な試作機の開発に踏み切ることになった。彼の後押しがなければ、この技術が世に出ることはなかったと思う。これが脱臭装置の開発に踏み出す第一歩になった。
(つづく)